【世界と宗教】戦後日本の無宗教化と昭和天皇詔書の本意
英語は無宗教に関することばが豊富です。それだけ宗教にまつわる経験が豊富なのですが、だからといってあまり宗教離れするのは考えものです。なぜなら、無宗教化が共同体や家庭の崩壊につながれば世の中は殺伐とするだけで誰も得しないからです。
日本人も無宗教だなどと澄ました顔をしていないで、戦後の原点で昭和天皇が伝えた詔書(いわゆる「人間宣言」)の意図をもっと汲み取った方がいいと思い、この記事を書きました。(※キャッチ画像は円山応挙『元旦図』
世界の宗教人口
地球の2人に1人はキリスト教徒とイスラム教徒であり総勢37億人近くいます。第3位に勢いを増す無宗教が来るのがいかにも現代です。
世界の宗教別人口ランキング | ||||
順位 | 宗教名 | 人口 | 信者の多い国 | 備考 |
1位 | キリスト教 | 22.5億人 | アメリカ:2.3億人 ブラジル:1.8億人 ロシア:1.2億人 |
カトリックが11億人 プロテスタントが約4億人 |
2 | イスラム教 | 14.3億人 | インドネシア:2.0億人 パキスタン:1.8億人 インド:1.8億人 |
国によって戒律が大きく異なる (女性が顔を出せるか等) |
3 | 無宗教 | 9.5億人 | 中国・日本など | 世界的に増加中 |
4 | ヒンズー教 | 9.1億人 | インド:8.3億人 | ほぼインドのみの宗教 |
5 | 仏教 | 3.8億人 | 中国:2.4億人 | タイは人口の9割が仏教徒 |
出典: 日本と世界の統計データ
この統計をとった時点で約10億人もいた無宗教人(中国人だけで数億人)ですが、その形容は多種多彩です。
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無宗教に関わる形容詞
religious、anti-religious、irreligious、non-religious
まず代表的な形容詞の意味の違いを見てみましょう。
What is the difference between irreligious and non religious?
These terms are used in order to define a state’s involvement with religion. Based on the degree of involvement a state (or country) can be called religious, anti religious , irreligious and nonreligious.
- a religious state is one which has an officially declared religion (like Pakistan, Iran etc)
- an anti-religious state is intolerant about religion, it tends to act against religious beliefs and tends to persecute the religions. ( example : erstwhile USSR , inspired by Karl Marx’s “religion is opium of masses”)
- an irreligious state does not have any official religion and it ignores religious implications while framing policies. (example : France and ban on burkini )
- a non-religious state also does not have any official religion but unlike irreligious states, it takes into account religious implications while framing policies . Secularism is a form of nonreligious stance. ( example : India)
ここでは形容詞の意味とニュアンスの違いを国家の政治方針の違いから説明しています。
- religious・・・公式に特定の宗教の信仰を宣明している(=国教を持つ)場合、その国は宗教国家となります(パキスタン、イランなど)
- anti-religious・・・宗教に公然と敵対し、ときには弾圧も辞さない場合、その国は反宗教国家となります(マルクスの「宗教は民衆のアヘンである」にそそのかされたかつてのソ連など)。
- irreligious・・・国教を持たず、宗教に関係なく政策を決める場合、その国は(積極的)無宗教国家となります(イスラム女性にブルキニの着用を禁じたフランスなど)
- non-religious・・・同じく国教を持ちませんが、宗教に配慮しながら政策を決める場合、その国は(消極的)無宗教国家となります(インドなど)。
上の2つはわかりやすいと思います。区別がつきにくいのが、下のirreligiousとnon-religiousでしょうか。ニュアンス的には・・・
- irreligiousは宗教への関心が相対的に強く、意識的な無宗教状態です。
- non-religiousはもう少し無意識的(無関心)で、あまり(またはまったく)宗教にこだわらない無宗教状態です(紛らわしいのですが、areligiousという形容詞もあります。これはirreligiousよりもnon-religiousに近いニュアンスです)。
近年ポリコレが流行りなので宗教に関してもニュートラルな表現が好まれます。無宗教といわずに、unaffiliated with (any particular) religion と言い換えるケースが目立ってきています。「(特定の組織)宗教とはおつきあいがない」という感じです。
atheist、agnostic、non-believer
個人に置き換えますと、重要な区別に無神論者(atheist)と不可知論者(agnostic)があります。さらに無宗教者(昔の日本語なら不信心、non-believer)というくくりも、世俗化が進む現代的には重要です。
三者の違いは宗教への意識(≒関心)という視点から違いを見るのがいちばんわかりやすいかと思います。原則的に、宗教(神)への意識が強い順に、atheist⇒agnostic⇒non-believerです。
- 無神論者がもっとも宗教(神)に意識的です。意識的でなければ、そもそも神の存在(神への信仰)を否定できません。
- 不可知論者はどっちつかずです。神の存在(神への信仰)に対する態度を決めかねる人なので、宗教への意識が強いとも弱いとも言い切れません。
- 無宗教者は必ずしも宗教への意識が薄いとは言い切れませんが、通常は薄いはずです。でも神(信仰)に無関心(無意識)ということは、必ずしも神の存在や信仰の否定を意味しません。神に関して文字通り何も考えていない(意識していない)可能性があるからです。
✖ An atheist is religious. | ✖ An agnostic is religious. |
△ An atheist is anti-religious. | △ An agnostic is anti-religious. |
〇 An atheist is irreligious. | △ An agnostic is irreligious. |
〇 An atheist is non-religious. | △ An agnostic is non-irreligious. |
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