【英語で読む貴乃花親方騒動】相撲協会の前近代性と非人間性

2018-01-11時事ネタ

貴乃花親方は案の定、理事の座から排除された。常識的な日本人なら、相撲協会の対応には、原発事故時の東電と同じ「臭い物に蓋をする」体質を感じるのではないか。

そもそも白鵬のいう「相撲界の膿」とは何なのか?横綱の品格とか、相撲道の美学などの綺麗ごとでお茶を濁している場合ではない。相撲部屋という閉鎖社会の非人間性、若者に対する制度的虐待をこそマスメディアは告発すべきなのだ。「礼を欠く」などと論点のすりかえに終始する池坊某は何にも仕事をしていない。

礼以前に人権意識を欠いている相撲界

今回紹介するのは相撲界に詳しいアメリカの作家デヴィッド・ベンジャミン氏の書いた記事の抜粋だ。以前紹介した記事「英語で読む日馬富士-貴ノ岩問題」でも触れられていたが、相撲にはCTE(慢性外傷性脳症)という大問題がある。瞬間的なぶつかり合いが、脳にダメージを与え、記憶障害や精神障害に至る可能性が高いのである。筋肉は鍛えられても、頭蓋骨のなかに浮かんでいる脳を鍛える方策は存在しない。アメリカではフットボール選手が死亡し、解決策がないので困っている。アメフトをやらせたがらない親も増えており、相撲と似た道を歩んでいる。アメフトは単なるcontact sportではなくcollision sportというショッキングな表現で呼ばれてようになっているのである。

引用に登場する斎藤医師は仮名である。本当のことを言い過ぎて相撲界で煙たがられているようだ。斎藤医師は「不必要にからだに悪い」相撲稽古そのものを問題視する。

人間の生理に反した力士の日常生活

(前略)A rikishi’s typical day starts before dawn and plunges directly into an entire morning of violent, anaerobic sumo practice. His only sustenance during this four hours of wrestling is water. Without breakfast to burn, his body is forced to generate energy by breaking down his own tissues.

力士の一日は夜明け前に始まる。午前中は稽古と呼ばれる暴力的な無酸素運動漬けに費やされる。4時間で口にするのは水だけだ。熱源になる朝食を摂っていないので、力士の身体は自らの組織を壊すことでエネルギーを作り出すしかない。

Finally, lunchtime — a massive meal of soup, meat, fish and vegetables that typically exceeds 5,000 calories. Then, with loads of fresh energy to burn, the rikishi takes a nap, two hours or more, during which all that food, with nothing to do, quietly synthesizes itself into body fat.

ようやく昼食になると、肉、魚、野菜のちゃんこを大量にかきこむ。通常、一食で5,000カロリーを超えるという。燃やすべき熱源を抱えたまま、2時間以上の昼寝の時間に入る。昼寝中、摂取された食物は何もすることがないので静かに体脂肪へかたちを変えるしかない。

Dr. Saito, in a normal day among his sumo patients, deals with 20-year-old boys — who’ve been practicing, gorgjng and napping every day for five years — who show signs of congestive heart failure, chronic pancreatitis, hypoglycemia, incipient diabetes, joint deterioration, profound kidney stress and a host of ailments normally associated with men 40 years older.

Almost every year, while I was in Japan, the Sumo Association sheepishly announced the demise of some lower-echelon rikishi, 21 or 22 years old, who — though the old farts in charge dared not admit it — had eaten himself to death.

ふだん斎藤医師は力士の患者を診察しているが、5年間稽古、ドカ食い、昼寝の生活を続けてきた20歳の若者は60台の老人に見られるような諸疾病―うっ血性心不全、慢性膵炎(すいえん)、低血糖症、早期糖尿病、関節障害、重度の腎臓ストレスなど―を患っていることが珍しくないという。

わたしの在日時代、相撲協会はほぼ毎年、21、2歳の下位力士の死亡をきまり悪そうに公表していた。親方とか理事とかいう老害どもはぜったい認めないだろうが、過食が原因である。

若者の命と健康を軽んじる相撲協会

Although the dangers Dr. Saito treats are obvious and curable, nothing in sumo’s regimen ever changes. Indeed, since World War II, the Sumo Ass’n has been aggressive in emphasizing size over intellect in sumo, fat over muscle — while paying other doctors to disagree with Dr. Saito.

The result is a sport steadily declining both in athleticism and popularity. Parents steer their kids toward baseball, soccer, rugby, basketball — anything to keep them from the feudal unwholesomeness of the sumo world.

斎藤医師が対処している疾病や予備症状は明白かつ治癒可能なものだが、角界の養生(食生活)はまったく変わっていない。実際、戦後の相撲協会は力士の知性より体重に重きを置き、筋肉より脂肪の価値を強調してきた。その陰では斎藤医師以外の医師に鼻薬をきかせ、斎藤医師に反対させてきたのである。

その結果、相撲の競技熱も人気も下がる一方となった。いまも親御さんたちは、封建的で不健全極まりない相撲界に子どもを預けることを避けている。なるべく野球、ラグビー、バスケットボールなどをやらせるのである。

<記事引用終わり>

誰も本当の問題を問題にしないのが問題

“かわいがり” など目につきやすい暴力以前に、人間の生理と健康を無視した、前近代的な相撲部屋システムが、徐々に徐々に若い力士の肉体を痛めつけているという話である。死人が続出している時点でなぜ問題視されないのか、不思議な世界だ。

こんな若者を非人間的に扱う相撲界に子どもを入れようという親が減るのは当然である。なぜ日本人横綱が何十年も生まれなかったのか、なぜモンゴル力士がこれだけ勢力を伸ばしたのか。メンタリティの問題以前に、このような虐待に近い世界が放置されていることに原因があるのではないかと思う。

改革の中身が問題

貴乃花親方は相撲道や改革をいうが、CTEや過食など、力士の健康や生命を脅かす問題についてはどの程度認識し、どのようにしたいと考えているのか気になるところだ。基本的な事柄を抑えない改革なら何の意味もない。

最近の日本人はこの問題に限らず、深刻な問題はぜんぶ先送りすることに慣れ切り、それを解決と見なすことで進んできた。マネーゴッド時代の無責任さはこういうところにもよく表れている。