【英語で読む日本】新元号「令名」の時代が始まる – New Era Reiwa will start on May 1, 2019

日本, 時事ネタ

わが園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも

新元号「令和」の典拠となった梅の宴を催した大伴旅人(おおとものたびと)の歌です。梅のこぼれるさまを降る雪に喩えるのはいまでこそ当たり前ですが、これはそのオリジナル。新時代は「春への兆し」をテーマとする歳月になるのでしょうか。

今回紹介するCNNの記事は良くも悪しくも現在の英語報道のスタンダードなので取り上げました。

「天皇陛下」の画像検索結果
https://edition.cnn.com/2019/03/28/asia/japan-new-era-emperor-intl/index.html

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日本が4月1日新元号を決定:文字通り一つの時代が終わるとき

※小見出しはブログ主による。

Japan will reveal the name of the country’s next era on April 1, as the country prepares for the abdication of Emperor Akihito later this year. The current Heisei Era began in 1989, when Akihito succeeded his father Emperor Hirohito, who ruled during the Showa period and is now known as the Showa Emperor.

日本政府は、昭仁天皇の退位に備え、4月1日に新元号を発表する。現在の平成時代は昭仁天皇が裕仁昭和天皇の皇位を継承した1989年に始まった。

abdication、動詞形はabdicate
例文:
Edward VIII was the only British monarch who voluntarily abdicated the throne.(エドワード8世はブリテン君主で唯一自らの意思で退位した国王である。)
エドワード8世は「王冠を賭けた恋」で有名な英国王。1936年12月、在位期間わずか325日で “生前退位” し、その後は最愛のアメリカ人女性ウォリス・シンプソンと結婚し引退生活を送った。

生前の譲位

Akihito, soon to be known as the Heisei Emperor, will become the first Japanese monarch in 200 years to step down, relinquishing the Chrysanthemum Throne to his son, Crown Prince Naruhito, who will become the 126th emperor on May 1.

過去200年で初めて生前に譲位する明仁天皇は5月1日、徳仁皇太子に皇位を譲り、徳仁皇太子が第126代天皇に即位する。退位後、昭仁天皇は平成天皇と称することになる。

relinquishing the Chrysanthemum Throne
文字通りには「菊の座を皇太子に譲る」。譲位の修辞的表現。relinquishはabdicate、retireの言い換え。Chrysanthemum Throneは日本皇室の菊の玉座。

 

京都御所紫宸殿に安置されてきた高御座(たかみくら)。「菊の玉座」の実物。

日本にとっての年号

Eras are about more than who is the emperor of the day. They are also, for example, the basis of the Japanese calendar system: 2018 was Heisei 30, coming three decades after the era began. While the current system aligns with the rule of the emperors, this has not always been the case. In the past, new eras were declared to mark historical moments.

元号は天皇の治世のみを意味しない。例えば、元号は日本の暦の基礎でもある。2018年は平成30年、平成元号が始まって30年を意味する。現行制度は一世一代となっているが、歴史的にはそうでない場合もあった。過去には歴史の画期を表す意味で、新元号が宣布されたこともある。

era name
英語で「元号」というときの定型表現。the name of a new era(epoch)とも。

For example, the Ansei period, beginning on November 27, 1854, on the Gregorian calendar, was adopted following a number of natural disasters and a fire at the imperial palace. The name Ansei means “tranquil government” and was intended to herald a peaceful period.

例えば、グレゴリオ暦1854年11月27日に始まった安政は(嘉永時代の)数多くの自然災害と京都御所の火事(内裏焼失)後に、幕府の肝いりで創始された元号である。安政という名は「穏やかな治世」を意味し、平和な時代の先触れとすることを意図していた。

※1854年11月27日は旧暦で、グレゴリオ暦1855年1月15日の間違い。嘉永から安政への改元については以下のwiki記事を参照。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E6%94%BF

Era names can also become political. The Showa era, the name of which can be interpreted to mean “period of radiant Japan,” spanned the rise of Japanese fascism and nationalism, when imperial troops under the Rising Sun banner invaded numerous neighboring countries. This attitude is sometimes called Showa Nationalism.

元号が強い政治的意味を帯びるケースもあった。「光輝く日本」を意味すると考えられる昭和という名は、日本のファシズムとナショナリズムが高揚し、旭日旗の下に大日本帝国軍が近隣諸国を侵略した時代を画した。この時代の傾向を「昭和ナショナリズム」と呼ぶこともある。

年号へのこだわり

Japanese people often identify strongly with their own eras — and the naming of the next one is an incredibly important process. Prime Minister Shinzo Abe’s cabinet will decide the name of the new era on Monday, April 1, after which it will be made public. Information about how the name of the era is being decided and discussions around it have been closely guarded.

On Sunday, Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga told reporters that the names of academics and other experts who are advising the government will not be made public, nor will the person or persons who proposed the chosen name be revealed.

多くの日本人は自分の生まれた時代に強い愛着とこだわりをもつため、新しい年号の命名は非常に重要なプロセスだ。安倍晋三内閣は4月1日月曜日に新元号を決定し、その直後に公表する予定。新元号の考案・選定プロセスの詳細は厳重に秘匿される。

菅義偉内閣官房長官は(3月24日)日曜日、政府が年号選定に関して諮問している学者や専門家の氏名は、新年号の提案者の氏名ともども公表することはない、と記者団に語った。

<記事引用終わり>

令和に関する報道

安倍総理は令和に込めた思いを「悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然。こうした日本の国柄を、しっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたいとの願いを込め、『令和』に決定した」と語りました。

コメント後半の英訳は以下となります。

“Like the flowers of the plum tree blooming proudly in spring after the cold winter, we wish the Japanese people to bloom like individual flowers with the (promise of the) future. With such a wish for Japan, we decided upon ‘Reiwa.'”

さっそくの偏向報道

CNNは上に紹介した記事の一部を使いまわしつつ、4月1日付の記事でさっそく安倍総理のコメントを “深読み” しています(取材先学者の言にかこつけるという常套手段)。

Speaking to CNN, Jeff Kingston, director of Asian studies at Temple University in Tokyo, said that many scholars were “twisting themselves into knots into what exactly ‘Reiwa’ means, and whether Abe’s explanation holds water.”

He said the choice of the name mirrors the rightward trend in Japanese politics. The choice of the ‘wa’ character, for example, which is the same as the character used for the Showa era of Naruhito’s grandfather, Emperor Hirohito, could be “consistent with Abe’s ongoing efforts to try to promote a more positive narrative of Japan’s wartime past.”

He added that the choice of a Japanese text to draw inspiration from, rather than Chinese literature as has been historically used, is “clearly a dog whistle to his conservative constituency.”

テンプル大東京校アジア学部長ジェフ・キングストン氏がCNNに語ったところでは、学者の多くは「令和の本当の意味をめぐって、安倍首相の説明は筋が通っているのか、ああでもないこうでもないと詮索に身をくねらせている」。

キングストン氏は令和という名の選択に日本政府の右傾化を読み取る。例えば、徳仁新天皇の祖父・裕仁天皇の時代である昭和の「和」をもう一度使ったのは「戦争の過去を積極的に捉えて語ろうとする安倍総理の、長年の努力の一環かもしれない」。

慣例の中国古典ではなく国書を元号の典拠としたことについては「明らかに安倍シンパへの密やかなメッセージだ」と付け加えた。

古い時代精神に囚われる左派メディア

さすがアメリカ版朝日のような論調で有名なCNN。侵略史観に染め上げられた昭和時代像に基づき、令和の第一字である「令」を完全無視して、昭和との連続性のみを取り上げ、それを右傾化だとか、dog whistle(特定の人間にだけわかる符牒的な言辞)だとか決めつける姿勢は、アメリカ本国での報道姿勢と軌を一にするものです。令和の担う「良き時代の瑞兆となる和の時代」という語感からは、いささか時代錯誤的に見えてしまいます。

令和の典拠

万葉集巻五の原文と現代語訳例

于時、初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香。

時は初春の良き月、あたりは瑞祥の気配に満ち、風は和やかだ。梅は鏡の前の美人が白粉で装うように花咲き、蘭は身を飾る衣に纏う香のように薫っている。

典拠は大宰府の大伴旅人(おほとものたびと)の邸宅で、桜を待つ人々の、梅の花を愛でる宴が催された際に詠み交わされた梅歌を導く序文の一節です。これには続きがあり、

のみにあらず、明け方の嶺には雲が移り動き、松は薄絹のような雲を掛けてきぬがさを傾け、山のくぼみには霧がわだかまり、鳥は薄霧に封じ込められて林に迷っている。庭には蝶が舞ひ、空には年を越した雁が帰ろうと飛んでいる。ここに天をきぬがさとし、地を座として、膝を近づけ酒を交わす。人々は言葉を一室の裏に忘れ、胸襟を煙霞の外に開きあっている。淡然と自らの心のままに振る舞い、快くそれぞれがら満ち足りている。これを文筆にするのでなければ、どのようにして心を表現しよう。中国にも多くの落梅の詩がある。いにしへと現在と何の違いがあろう。よろしく園の梅を詠んでいささの短詠を作ろうではないか。

となっています。当時、梅は新来種でとても珍しい花だったようです。寒くて部屋に閉じこもっていた人々が春の先触れに誘われ、「淡然と自らの心のままに振る舞い、快くそれぞれがら満ち足りている」和やかな宴の情景です。そういう日本にしたいという思いは素直に受け取っていいでしょう。梅に託して、新しいものを寿ぐ精神も織り込まれているのではないかと思います。

桜の季節の前触れ

「白梅」の画像検索結果

令月は2月の美称。徳仁皇太子(新天皇)の誕生月でもあり、新天皇にふさわしいネーミングです。

ただ重要なのは、梅が桜の「先駆け」「前触れ」だという点。日本の本格的な復活へ向けた準備の季節(治世)というのが新元号(新天皇)の役割のようです。令和時代の日本はCNNや朝日新聞に代表される「戦後レジーム」(自虐史観)をずっと続けていたいリベラル勢力と戦いながら、どうにかこうにか「桜の季節」へと前進していくのでしょう。

令の第一義は法令、律令の令。おきてや決め事のことです。令を守る官は立派な人物だということで、立派や善事の意味が生じて、令息、令嬢、令月など人や物の敬称として使われるようになりました。

「令」を司る官の「和」への逆行

したがって令和に込められた願いは、官僚や長官と呼ばれる人々が対外的にも対内的にも「令をもって和する」政治を司っていくことです。

戦争しないための軍備増強は対外的な「令」としてOKですが、安倍政権の一貫した経済的 “内国窮乏策” (財務省増税派を首魁とする新自由主義)はいかがなものでしょうか。「一人ひとりの日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる」という総理の願いに逆行する官僚独裁が放置され、国内は貧困、絶望、犯罪、社会不安に毒されています。いい加減、亡国官僚は自ら「和する令」に目覚め、是正に動いてほしいものです。

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