【文化の重層性05】ヨーロッパの危機意識と止まらないロゴス

2018-05-29宗教, 文明文化の話, 歴史

この西洋文化の重層性に関するシリーズ記事を書いている動機は、文化破壊への抵抗である。この文化を破壊する野蛮な力は、実は、ヨーロッパがキリスト教を取り込んだときから時限爆弾として仕込まれたものだ。それが前回まで扱ってきたロゴス信仰である。

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ロゴス信仰の世界史的意義

西ヨーロッパ史を簡単に振り返り、ロゴス信仰の歴史的義意を確認してみよう。

閉じた世界観から統合的世界観へ

キリスト教が生まれる前の先進地帯だったオリエント世界は基本的に国単位で動き、各民族のミュトスの力が王朝をまとめあげていた。メソポタミア然り、エジプト然り、インド然り、イラン然り、イスラエル然り(旧約聖書のストーリーの土台はヘブライのローカル神話)。

紀元前後、この情勢に変化が現れた。ユダヤ教異端の預言者イエスの周辺で何かの化学反応が起きた。イエスの死後、彼のつくった小さな組織のまわりに熱烈な宣教者と神学解釈者が吸い寄せられ、古来のミュトスとソフィアをロゴスで統合して、ヘブライ神話の世界観を一気に人類普遍の壮大な世界観へ転換させたのである。

理性ドライブの内蔵とカトリックの折衷性

聖霊に相当するロゴスは言語(思想)と数式(科学)のどちらでも表現しうるが、聖霊の働き(理性、自由)を通じて神(普遍的真理)に近づくという方向性は共通している。これはそれまになかった自力本願思想であり、人間を神話世界の神の軛から解き放つ効果を発揮した。

当時の政治状況はいまだ専制支配だったが、人間は政治的解放に先駆けて、精神上は潜在的な自由を獲得したのである。

ただ、あくまで潜在的自由であって、この時代のカトリック信仰の基本スタンスは、人生の始末はすべて神の意思に委ねるという他力本願である。だから聖人信仰(聖ヨハネ、聖母マリアなど)を強調して、偶像崇拝すれすれの聖人画や宗教画を大量につくり、信者に拝ませた。後に宗教改革が起こったとき、カトリックはこうした折衷主義を批判されることになる。

また聖職者の権威を高めるため、神父はラテン語聖書を読みきかせこそすれ、信者が直接読めるようにはしなかった。信者は、神父の説教を通じてミステリアスな神のことばを聞いていたのである(このせいでヨーロッパの識字率は低いままだった)。

禁欲主義と救済論

キリスト教が生まれた当時の文化程度は東高西低の時代。二大勢力はローマ帝国とペルシャ帝国だったが、ペルシャにはいち早く対抗宗教が生まれ(ゾロアスター教、マニ教など)、キリスト教の布教は思うように進まなかった。それが、なぜ西ヨーロッパでは受容されたのか?理由はいくつか考えられる。

  • 対抗する強力宗教が存在しなかった。
  • 万人に開かれた宗教はキリスト教以外なかった。
  • 唯一神の設定。ヘブライ発のローカルな世界観が、あたかも人類全体の福音として響くためには、どこでも通用する普遍性が大事だった。

だからといってすんなり受け入れられたのではない。当初、人間の弱さを強調し、神への他力本願を迫るキリスト教は、ローマのラテン的精神風土に馴染まず敬遠され、激しい弾圧をうけた。ところが幸いなことにローマのエリート層が堕落腐敗(賄賂、飽食、性的自堕落)し、庶民の不満が昂じ始めると、キリスト教の禁欲主義(ascetism)はリアルな教えになっていった。

出典:wikipedia Commons

とくに神の恩寵(grace)による救済(salvation、身分に無関係の “最終勝利”)というキリスト教の殺し文句は、弱い立場にあった女性や奴隷たちのこころを捉え、庶民層を中心に信者数を急激に増やす原動力となった。

当時のローマではミトラス、イシス、キュベレーなど秘儀的な宗教が乱立していたが、いずれも庶民層には敷居が高く(参入障壁と男性結社的閉鎖性)、キリスト教の “マーケティング” に敵うものはなかった。

当時キリスト教最大のライバルだったミトラス教は小アジアからローマ兵士を介してローマに入り、一時は皇帝の信者も獲得し、ドイツやイギリスまで普及したが、キリスト教が国教化されると急速に廃れていった。

ゲルマン要素の混入

北欧(ゲルマン系)神話の世界観。世界樹を中心とし、相互につながった9つの世界で構成され、キリスト教の世界観とはまったく異なる。 (出典:https://ashleycowie.com/)

5世紀に西ローマ帝国が崩壊するが、西方世界は帝国領を除けば、いわゆる “蛮族” (barbarians)の土地。ゲルマン社会には帝国崩壊前から、異端として排除されたアリウス派が入りこみ、宗教的には在来信仰との混淆状態にあった。しかしゲルマン人は、どちらかを国教にするでもなく、ゲルマン語を公用語にするでもなく、領土の分捕り合いにかまけていた。

それでも次第にフランク王国(メロヴィング朝、Merovingian dynastry)に権力が集約され始めると、カトリック教会は国王クロヴィス(Clovis )をカトリックに改宗させ(依拠する政治権力を求めていた教会と、国民統合の権威を欲していたクローヴィスの思惑が一致した)、お墨付きを与えた。

ヨーロッパ世界の誕生

この結託は、その後カロリング朝(Carolingian dynasty)のカール大帝(Charles the Great、シャルルマーニュ、Charlemagneとも)への皇帝号戴冠により盤石なものとなり(神聖ローマ帝国の誕生)、その後の西ヨーロッパの趨勢を決した。

チャールズ大帝の戴冠式(出典:wikipedia)

その過程で教会はギリシャ・ローマ神話のみならず、蛮族のゲルマン神話(基層信仰)、さらにその前メジャーだったケルト神話などすべての異教(paganism)を排除し、ロゴス中心のキリスト教的世界観を定着させていった。

とはいえ歴史は紆余曲折する。ヘブライ→ローマの流れにゲルマンという異質の要素が混入したことで、ロゴスの発現は長く延期された。暗黒の中世(Dark Age)と呼ばれる、ゲルマン民族によるキリスト教的価値観の消化過程が始まる。

キリスト教化の過程(出典:https://decolonialatlas.wordpress.com/)

ロゴスの再起動とゲルマンの自立

ゲルマン世界のキリスト教化に当たっても、キリスト教の禁欲主義は不変だった。伝統的に部族連合的なゲルマン社会は両性間の役割分担が明確で、相対的に女性の力が強かったので、カトリック教会は強権的な戒律をつくり、女性が采配する家庭内の規律を締め付け、それを通じて男性の内面にも規制をかけた。

ゲルマン社会は数百年に渡り、ローマ製の法律と宗教で手足を縛られることになったが、11世紀頃の十字軍をきっかけにイスラム世界の知的水準の高さに驚き、慌ててイスラム語文献からギリシャ思想を再導入する。この頃はイスラム黄金時代と呼ばれ、ヨーロッパ文化に大きな影響を与えた。キリスト教に埋め込まれたロゴス信仰はこうして再起動し、ルネッサンスへ至る。

宗教改革によるゲルマン人の自立

16世紀に入るとゲルマン人はいよいよ鬱屈していた「本音」を噴出させ、宗教改革を始める。ロゴス(合理)思想が蠢いてカトリック司祭階級の “中抜き” を行ったのである。

ルター(Martin Luther)にしてもカルヴァン(John Calvin)にいしても、信仰に必要なものは神と聖書だけで、人は司祭を介さず神を直接向き合えばよいとした(儀礼の軽視、聖典の重視)。経済取引に銀行は要らないといっている仮想通貨のようなものだ。それくらい儀礼の形骸化と教会の権威主義(政治介入、生活支配)が煩わしくなっていたのだろう。

プロテスタントの独立とは要するに教会からのゲルマンの精神的独立だった。だからプロテスタント各派はロゴスを前面に打ち建て聖人信仰や偶像崇拝的な宗教画を否定し、儀礼を簡素化し、その代わり母国語聖書とバッハなどの宗教的音楽を推奨した。

プロテスタントは教派が乱立し(ルーテル派、改革派、長老派、バプテスト、メソジストなど)、各自がバラバラに組織を運営しているが、現代的影響という面ではカルヴァン派の存在がとくに重要だ。彼の弟子筋はイギリスとアメリカの主力派閥になっていったからである。

たとえば、トランプ大統領の所属する長老派(Presbyterian Church、プレスビテリアン)はカルヴァン派の有力教派である。カルヴァン派の最大の特徴は資本主義との相性の良さだ。

カルヴァン思想
カルヴァンは近代的ロゴスのひとつの代表として重要だ。彼にとって、ネオプラトン派やグノーシス主義などの神秘思想が唱える「人間の霊魂の中に直接に神性が入り込むというようなことは、全被造物に対する神の絶対的超越性からしてありうべからざること」である。したがって「神は誰を救うかあらかじめ決められている」が、人間に神の意図は理解できないとする二重予定説(double predestination)を唱えた。徹底した合理主義者なのである。
この思想がどうして資本主義の発展を促したのか?
人間を含め、あらゆる存在はただ神の究極目的の実現のために奉仕する道具に過ぎない(自己の使命はつねに自力で確認・検証せよ)。一生懸命働き、その利益を神への奉仕(生産の拡大)に用いることが正しい生き方(経済の成長)である。だからカルヴァンは利息も平気で認めた。
こうして人々はカネ儲けに精を出すお墨付きを教会から得たのである(何が神の目的なのかは人間が推測するというのだから、理屈は後からいくらでもこねることが可能)。

ユダヤ人の移動とリンクする覇権の移動

中世以降のヨーロッパ史は覇権の移動で理解する方がわかりやすい。覇権は、交易と金融を得意にしていた(というより、それ以外にやらせてもらえる商売がなかった)ユダヤ人の移動とともに推移するという法則があるのだ。

最初は多くのマラーノ(ユダヤ人)を抱えていたスペインやポルトガル(カトリック)がリードしていたが、レコンキスタのあおりでユダヤ人が国外追放され、オランダ(プロテスタント)へ逃れると、アムステルダムが商業と金融の中心地になる。

その後、清教徒革命を経たイギリス(プロテスタント)で国教会が生まれると、ユダヤ人はロンドンへ本拠を移し、大英帝国への成長を後押しする(金貨を担保とする信用創造の発明、国債=借金による戦費調達の発明など)。世界初の中央銀行ができたのもイギリスだった。

こうして資本の蓄積で力を付けたブルジョワがパワーゲームの主導権を握ると、イギリスで産業革命が起き、それに呼応してフランスでフランス革命が起きる。その後は王なき世界が世界のトレンドとなり、民主制下での自由主義的資本主義が主流となって現代に至る。

これは宗教面から見れば、新旧の対立を超えて、キリスト教の形骸化が決定づけられたことを意味する。ロゴスは自律的な運動をはじめ、もはや神の裏書を必要としなくなったといえる。

アメリカにおけるロゴスの完全開花

新大陸ではフランス革命を模したアメリカ(プロテスタント)がイギリスから独立。今日に続くアングロ・サクソン優位の政治経済システムが生まれる。英語のグローバル・イングリッシュ化もこの流れの中にある。

機を見るに敏なユダヤ人は大量に渡米し、新大陸での地歩を固め始める(後に20世紀に入ると、戦禍を逃れるべくアシュケナージと呼ばれるユダヤ人たちが主に東欧からアメリカへ渡る。彼らの出自は黒海周辺のチュルク系国家ハザールであり、イスラエル出身のディアスポラの末裔ではない)。

アメリカはヨーロッパ史の成果であるプロテスタンティズムとリベラル資本主義路線を高速度で駆け抜け、アメリカ型資本主義を確立していく。とくに二度の世界大戦で漁夫の利を得たアメリカは世界の警察国家を自認し、次第にその軸足を実体産業から、軍事力(ドル覇権)を背景にした金融覇権主義へ移行していく。基層文化をもたない人工国家アメリカは、もっとも純粋にロゴス信仰(合理主義)を開花させることのできた場所だったといえるだろう。

ヨーロッパの危機意識

ところがアメリカ万歳、ロゴス万歳で済まないのが人類史だ。ロゴスの徹底は基層文化を破壊し続けることでもあったため、伝統社会にひずみが生じて、人間がアトム化され、孤立・疲弊し始めたのだ。

決定的な契機はフランス革命を駆動した啓蒙的な理性(ロゴス)信仰の爆発にあったように思う。革命家は基層文化をあまりに軽視し、ロゴスを信じすぎたのである(楽観主義と設計思想)。人間は科学の力をもって理想の社会を設計し、運営できるのだという根拠のない思い込みである。

その後にやってきたマルクシズムもまた設計思想と進歩主義のかたまりだった。人間社会が原始から資本制へ進化し、最終的に共産制で完成するという思い込み。それは終末思想の焼き直しだし、経済格差を人為的な再分配で解消し、なおかつ経済成長を維持できるという自信はいったい何に根差していたのか。理性崇拝バブルとしかいいようのない時代である。

The Paris Statement – A Europe We Can Believe In

その行き着いた果てが現代のヨーロッパだ。個人と自由は錦の御旗だったが、いくら困っても、もう神に責任を転嫁できない。米中偏重の日本の報道では見えにくいが、彼らの危機意識は、昨秋に公表された “The Paris Statement” という文章に明らかだ。これは数カ国から有力な保守知識人が共同署名したアンチ文化破壊声明だ。全文は長いので見出しだけ訳出してみたが、概略は伝わると思う。

THE PARIS STATEMENT

  • Europe is our home.(ヨーロッパは我々の故郷だ)
  • A false Europe threatens us.(偽ヨーロッパ主導者が我々を脅かしている)
  • The false Europe is utopian and tyrannical.(偽ヨーロッパ主導者はユートピアを夢見る暴君だ)
  • We must defend the real Europe.(本物のヨーロッパを守らなければならない)
  • Solidarity and civic loyalty encourage active participation.(偽ヨーロッパ打倒活動は市民の連帯と忠誠を促す)
  • We are not passive subjects.(我々市民は誰の従属者でもない)
  • The nation-state is a hallmark of Europe.(ネーション=ステートこそヨーロッパの歴史的成果の象徴だ)
  • We do not back an imposed, enforced unity.(偽ヨーロッパが押しつけ強要する協和を支持しない)
  • Christianity encouraged cultural unity.(キリスト教こそ文化の協和を促してきた)
  • Christian roots nourish Europe.(ヨーロッパの文化的ルーツはキリスト教にある)
  • Classical roots encourage excellence.(ヨーロッパ的な卓越への意思はギリシャ・ローマの古典文化に負う)
  • Europe is a shared project.(ヨーロッパはいまも進行中の共同プロジェクトだ)
  • We are losing our home.(偽ヨーロッパが我々から故郷を奪おうとしている)
  • A false freedom prevails.(インチキの自由が幅を利かせている)
  • Individualism, isolation, and aimlessness are widespread.(個人主義、孤立、無目的な刹那的人生観が蔓延している)
  • We are regulated and managed.(偽ヨーロッパが我々を規制し管理している)
  • Multiculturalism is unworkable.(文化的多元主義は機能しない)
  • Bad faith grows.(誤った信仰が育っている)
  • Technocratic tyranny increases.(テクノクラートによる専制的統治が強まっている)
  • The false Europe is fragile and impotent.(偽ヨーロッパはもろく無力だ)
  • A culture of repudiation has taken hold.(過去を否定する文化が世を支配している)
  • Elites arrogantly parade their virtue.(エリート層は傲慢になり権勢を誇示している)
  • There is an alternative.(打開策は存在する)
  • We must turn back ersatz religion.(模造宗教は偽ヨーロッパにお返ししよう)
  • We must restore a true liberalism.(本物の自由主義を取り戻そう)
  • We need responsible statesmen.(責任ある政治家を選ぼう)
  • We should renew national unity and solidarity.(国民の協和と連帯を再興しよう)
  • Only empires are multicultural.(文化的多元主義は帝国でしか通用しない)
  • A proper hierarchy nourishes social well-being.(適切な社会階層こそ社会を健全に保つ)
  • We must restore moral culture.(道義に満ちた良き伝統を取り戻そう)
  • Markets need to be ordered toward social ends.(市場は社会的目的を満たす方向に再編すべき)
  • Education needs to be reformed.(教育改革が必要)
  • Marriage and family are essential.(結婚と家庭は人間生活の基本)
  • Populism should be engaged.(ポピュリズムを無視せず問題意識を共有しよう)
  • Our future is the true Europe.(未来は本物のヨーロッパの側にある)
  • We must take responsibility.(一人ひとりが責任をもって行動しよう)

保守層のバランス感覚

この文書にはヨーロッパ保守層の考え方、そのバランス感覚が現れていると思う。彼らの価値観を知るには、彼らが攻撃している “偽ヨーロッパのパトロンたち” の裏をすくえばよい。

  • 偽ヨーロッパのパトロンたちは、自由主義と個人主義がユートピア社会への王道だと信じている。
    →保守層は行き過ぎた自由主義や個人主義はひとを孤立させ、人生の目的を奪うと憂慮している。
  • 偽ヨーロッパのパトロンたちは、フラットでオープンでマイノリティにやさしく多文化が共存する社会が理想だと考える。そうした社会は連帯と協和の基盤になる。
    →保守層は差別撤廃には賛成するが、それと多文化の共存は両立しないと考える。人間にとっては伝統社会のなかで他者を尊重する生き方のほうが健全である。
  • 偽ヨーロッパのパトロンたちにとってネーション=ステートの枠組ほど邪魔なものはない。ネーション=ステートの存立基盤である伝統的規範、それに基づく各種の規制や無駄な公共支出は廃止した方がよい。
    →保守層はネーション=ステートこそヨーロッパ史の精華であり、人間が最も健常に暮らせる枠組みだと考える。伝統的規範がないところに健全な常識は育たず、連帯や協和の精神も育まれない。
  • 偽ヨーロッパのパトロンたちの最終目標は、ネーション=ステートの解体と市場原理に任せた社会統治だ。政府機能は私企業に代行させ、市場原理を通じた資金(予算)配分を行うのが効率的だ。
    →保守層は、市場原理至上主義は私益を優先するため社会目的(公共の福利)に奉仕せず、益々格差を拡大させ、金持ち以外には不本意なディスユートピアしか生まない。市場には適正な規制が必要だ。
  • 当今見られるポピュリズムはこうした理想的未来社会を建設している者への反動であり、ポピュリストは伝統や既得権益にしがみつく古い人間だから徹底的に批判し、社会の中心から排除しなければならない。
    →保守層はポピュリズムの根源には人々の行き過ぎた合理主義支配への危機意識があり、真剣に受け止めるべきだと考えている。良識ある判断から目をそむけてはならない。

キリスト教に埋め込まれたロゴスの駆動力は想像以上だったようだ。西洋文明に巻き込まれた他の社会でも、日本を含めて同様の事態が進行している。”偽ヨーロッパのパトロンたち” の信条は総体として現代最強の強制力をもつ “宗教” になっている。要するに彼らの金力が信者を増やし続けているだけのことだが、人間があらゆる自由を求めた結果が、このような非対称世界なのだとしたら何とも皮肉な話だ。

自発的隷従か、偽ヨーロッパか

走り出したロゴスの疾走は止まらない。現在、最も “偽ヨーロッパのパトロンたち” と異なる社会構築の意思を明らかにしているのは中国共産党だろう。最近のニュースでは、AIとビッグデータを活用して、国民一人ひとりの社会信用を格付けするシステムを導入するそうだ。オルダス・ハクスレイの描いたような “自発的隷従” の未来社会をつくりたいらしい。

たしかにこれもひとつの道だろう。”偽ヨーロッパのパトロンたち” の思い描く未来社会がそれよりましだと言い切る自信はない。

 

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