【時事】東アジアの戦後秩序が変わる

今回はアメリカネタである。


当サイトではアメリカ情報の氾濫を手助けする必要もないと考え、意図的にかの国の話題を避けてきたが、そうもいっていられない事態が進行し始めた。アメリカが中国潰しに本気になり、これまで放置されてきた東アジアの戦後秩序が音を立てて変わろうとしているからだ。

まず前提としてアメリカはどういう国かというと、押さえておきたいポイントが2つある。

  • 共和党政権時に本気になる
  • 外交下手を戦争でカバーする

スポンサーリンク


共和党政権の本気度

アメリカという国は「民主党が壊し、共和党が復活させる」のが基本パターンの国である。わかりやすくいえば、詐欺師かヤクザのどちらが前面に出るか、状況によって変わる。

今回の対中関税戦争の布告は、ヤクザが前面に出るという啖呵である。ようやく国家的危機を自覚し、本気で中国潰しにとりかかった模様だ。”Tame China” の時代が来る。

生ぬるい詐欺師の時代は終わった

思えば1990年代、クリントン民主党長期政権時に、いまに至る対中問題の種はほぼすべてまかれたといってよい。当時先進諸国の市場は飽和し、喉から手が出るほど「新規市場」を欲していた。その中心として中国市場に白羽の矢が立ち、同盟国日本を犠牲にしてまで中国を肥え太らせる中国推しトレンドがスタートした。

それだけではない。白人種は伝統的に「中国知らず」で「シナ買い被り」である。かの国の特殊性を重視しない。4000年だか5000年だかのうち、2/3の時間は漢民族以外(北方騎馬民)の支配下にあった国体の非連続性を認識しないのである。

アメリカも例外でなく「お互いが儲かっていればいいじゃないか、豊かになれば中国も民主化するさ」という甘い見通しが今日の危機的状況を招いた。

戦争手段による覇権維持

アメリカは「外交下手を戦争で克服する」国でもある。自分の失敗を相手のせいにして難癖をつける。この外交には通商政策や対外的な経済政策も含まれる。

アメリカはこの数十年中国を甘やかし、増長させた。民主体制下の資本主義国でもないのに、傍若無人を見て見ぬふり、自由主義経済の甘い蜜をたくさん吸わせる破格の厚遇をしてきた。投資回収期間である。

しかし、今年冒頭の国家安全保障戦略でも明言されたように、中国を仮想敵と規定し、スーパー301条という、めったに抜かない伝家の宝刀を抜くことを決定した。しかも知財という中国最大の弱点をついてきた。以下の記事から引用しよう。

出典米、中国製品5兆円に制裁 知財侵害で301条発動へ

トランプ米政権は22日、中国による知的財産権の侵害を理由に、500億ドル(約5.2兆円)相当の同国製品に高関税を課す制裁措置を正式表明した。大統領権限で強力な貿易制限をかける「通商法301条」を発動し、中国企業の対米投資も一部制限する。

事実上の宣戦布告である。日本はこれと同じパターンでやられ、GDP世界No.3に陥落することになったが、No.2はつねに撃ち落される定めなのである。

未来を制する意思

これは、中国が巨額な政府予算をつぎ込むAIやロボティクス分野が未来を制するという認識をアメリカも共有していることの表れであり、その流れの中で中国の技術泥棒を防止する算段である。

これまでの偏執狂的なメディアのトランプバッシングは、中国ロビー側の焦りを示している。過去が惰性となって慣性として働き、相変わらず寝ぼけたリベラリズムを唱えていれば国民が騙されると思っている。そろそろ政権の本気度がわかり、バッシングがやむ頃合いだ。

ようやく東アジアの戦後が終わる

日本のメディアも基本構図は同じだ。大したネタでもない大阪ローカルの土地問題を無理やり蒸し返すのは、それだけ中国ロビーもしくは戦後レジュームの既得権益層に焦りがあるからだろう。彼らの大好きな戦後レジュームが半島を舞台に音を立てて崩れつつあるのが怖くてたまらないのだ。

アメリカの関連記事

以上の補足として、以下の英語記事から政府高官の談話部分を引用しよう。

出典After Tariffs, Trump to Punish China for Intellectual Property Theft

まず小見出しで明確に敵対的意思を伝えている。

Steel and aluminum tariffs to protect defense industry, U.S. infrastructure from Beijing ‘economic aggression’

明白に、軍事産業の保護、ならびに米本土のインフラを守るといっている。本気度がうかがえるだろう。

知財保護による野蛮の排除

“The next action on the president’s plate will be the Section 301 action which is designed, in a laser beam way, to address the issue of forced technology transfer, theft of intellectual property, and China’s bid through the China 2025 architecture plan to capture the emerging industries of the future,” the senior official said.

301条は、”laser beam way”、すなわちダイレクトにピンポイントかつ迅速に敵をやっつける法律だ。何が狙いかも明白にいっている。(ロシアを含め)ユーラシアに盤踞する野蛮の排斥だ。中国は遅れてきた帝国主義者であり、その傍若無人、ルール無視のごり押し手法で、2025年をめどに世界の新興産業(AI、ロボティクス)を牛耳ろうというプランを発表している(Made in China 2025)。

ふざけるな、これ以上、敵対的買収による強制的な技術移転、知的財産の窃盗を許さないぞ、というのである。

新国家安全保障戦略

“The strategy basically acknowledged that our trade with China was not peaceful engagement, but rather that China was engaged in strategies of economic aggression designed to capture global markets, protect their own market, acquire intellectual property and IP of the world, dominate traditional manufacturing industries, and to a large extent take control of a lot of core natural resources of the world,” the senior official said.

平和的協調なんてとんでもない、中国のは経済侵略じゃないか、という強い表現で中国をけん制している。正直、もっと早くいえよという感じがしないでもない。

通商代表部USTRのコメント

“Offenders in many cases continue to operate with impunity. Particularly troubling are reports that actors affiliated with the Chinese government and the Chinese military have infiltrated the computer systems of U.S. companies, stealing terabytes of data, including the companies’ intellectual property for the purpose of providing commercial advantage to Chinese enterprises.”

中国政府、軍関係者がアメリカのコンピュータ・システムをハックし、知財を含む大量のデータを、何のお咎めもなく盗み続けているのは深刻な問題だとの認識。これも今更感満載のコメントだが、アメリカ側が、このタイミングで口裏を合わせてきているのが重要な変化だ。

with impunity
「処罰を受けずに」「何のお咎めもなく」を意味するイディオム。

“The USTR is challenging WTO on China on their insistence that they be treated as a market economy,” the senior official said. “That change in designation would be extremely harmful to the world, not just the United States.”

統制経済と自由経済の都合のいい使い分けはもう許さないということか。アメリカは伝統的にフェアな競争というものに価値を置く。中国のやり方はフェアではないと、これも今更だが前面で主張し始めた。昔の日本に対する対応(構造協議)を思い出させる。

鉄鋼・アルミの関税措置

“The argument for me is economic security is national security and we have a lot of other things we need for the economy in 「order to have a strong country. Economic security is national security,” the senior official said.

「経済上の安全保障イコール国家の安全保障だ」と断言している。とくに鉄鋼やアルミは産業の基幹部材で、軍事産業のみならず国家のインフラという屋台骨を支える存在。

日本も指定国に含まれるが、日本の供給部材は高付加価値製品。向こうは買わざるをえない。大量生産の中国とはスタンスが異なる。

<記事引用終わり>

日本は自立のチャンスなのだが・・・

キーイベントは5月に予定される米朝会談になる。

決裂すれば、緊張はピークに達し、軍事オプション行使が現実味を帯びる。決裂しなくても、三代目がフィンランドに行っている間に、クーデターが起きて二度と祖国の土を踏めなくなるかもしれない(中共の用意した傀儡政権誕生)。亡命先はロシアしかあるまい。だからこそのフィンランドなのではないか。

北朝が唯一生き残るとすれば、韓国とのセットで、本土防衛用の核地雷のみを残し、諸外国を狙う核弾頭を全面放棄する「半島核弾頭軍縮」しかないのでは。こうすれば、アメリカがずっと望んでいる「韓国からの米軍撤退」が現実味を帯びるし、デタントで中国も日本も満足するだろう。

どこに着地するにせよ、北朝は蛇に睨まれた蛙。事実上、半島の戦後秩序は消滅したも同然だ。鴨緑江を挟んだアメリカとの直接対峙は中共の悪夢。とくに北朝に隣接する東北地域は北京の統制が最も利きにくい瀋陽軍区。関税戦争に報復措置などと言っているのはメンツだけであって、水面下ではアメリカに協力するしかないだろう。

こうした大きな流れを読めば、安倍政権には大きなサポート。アメリカは安倍政権を延命させ、改憲を急がせるはず。日本は半島がどうなるにしろ、ちゃっちゃと改憲しておいた方がいい。みずから戦後秩序を終わらせる意思くらい示せ。