【英語学】イギリスとはどこか?ブリテン?イングランド?UK?

2018-10-20Web紀行, 歴史, 英語の話, 英語史, 語源学

英語の発祥元であるイングランドの歴史は、異なる民族が波状的に進出し、覇を競い合うことで形成されてきた。

ステーンヘンジは4500年ほど前に作られたとされる(出典:wikipedia)

イギリス形成史

イギリス形成史をざっと一覧すれば、

先史時代(ストーンヘンジなど)
→ケルト系ブリトン人の定着
→ローマ人による支配(ブリタニア)
→アングロ・サクソン人の流入(北西ドイツ、デンマークから)
→ヴァイキングの流入(スカンジナビア半島から)
→ノルマン人の侵略と統治(ノルマン・コンクエスト)
→スコットランド・ウェールズなどケルト系子孫の併合
→大英帝国
→現代のグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)

という次第になる。

(出典:https://www.newscientist.com/)

このうち日本で意外と知られていないのが、現スコットランドに近い領域を除くグレートブリテン島が3世紀以上もの間、ローマ帝国に支配されていた事実だ(アイルランド島は手つかずだった)。

イングランドがローマ属州だったブリタニア時代(BC43~BC410年、英語ではBritannia、混同を避ける場合にはRoman Britain)については次回紹介するとして、今回はいわゆるイギリスの領域についてきちんと理解しておこうという趣旨だ。

イングランドはUKの一部でありグレートブリテンの一部

日本ではイギリスもしくは英国という呼び名が定着しているが、それが具体的にどこを指すのかいまいち明確でない。文脈に応じて話者の脳裏で使い分けている節さえある。

それはイングランドなのか、それともUKなのか?はたまた・・・紛らわしいので整理しておこう。以下の地図を見てもらうとわかりやすい。

 

England-vs-GB-Vs-UK
出典:Brilliant Maps

UK(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)

イギリスが国家として指す場合は、このUKのことだ。グレートブリテン諸国のイングランド、ウェールズ、スコットランドと、アイルランド島北部に位置する北アイルランドの4カ国(four countries)で構成される主権国家。

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出典:しらべぇ

グレートブリテン(Great Britain)

UKのうち北アイルランドを除く地域の総称。要するにグレートブリテン島そのものを差す場合に使う。英文を書くときはこういうところにも神経を使いたい。

したがってブリテン(Britain)とかブリティッシュ(British)ということばは、このグレートブリテン島のことを指し、アイルランドは含まれない。

グレートブリテンは以下の3つの国(country)で構成される。

ブリテンの語源
語源的には、次回のテーマであるローマ属州時代の呼称Britanniaから来ている。ローマ人はこれをギリシャ人の地域名から採っている。その地域名とはギリシャ人が交渉のあったケルト人が話していた古代ケルト語の、ピクト人を指す人種名から決めたものらしい。ほとんど堂々巡りの世界だ。

イングランド(England)

ラグビーやサッカーの試合でイングランド対スコットランドの試合があったりすると、一瞬、「?」と思う人もあるだろう。グレートブリテン島のなかで最大の領域をもつ国(country)をイングランド(いわゆるアングロ・サクソンがマジョリティ)と呼んでいる。首都はロンドン。人口は約5,300万人。イングランドの語源は、”the land of the Angles”(アングル人の土地)である。

ウェールズ(Wales)

グレートブリテン島の西部にあるのがウェールズ。古代ケルト系ブリトン人の末裔が多く暮らす。人口は約300万人。首都はカーディフ(Cardiff)。英語以外にケルト語系ウェールズ語(Welsh)が公用語。

ウェールズの語源はゲルマン祖語のwalha(ゲルマン語を話さない異邦人の意)。古代、ゲルマン人が北ドイツ地方に進出した際、現地に住んでいたケルト人のなかで最も有力な部族がVolcaeだった。これがゲルマン語としてwalhaに転化した。

スコットランド(Scotland)

グレートブリテン島の北部にあるのがスコットランド。過去の歴史を反映してUKからの独立気運がくすぶっている。ここも古代ケルト系ブリトン人の末裔が多く暮らす。人口は約520万人。首都はエディンバラ(Edinburgh)。英語以外にゲルマン語系スコットランド語(Scots)、ケルト語系スコットランド・ゲール語(Scottish Gaelic)が公用語。

スコットランドの語源はラテン語のゲール人を指すことばscoti。それ以上の由来は不明だという。

アイルランド島(Ireland)

アイルランド島は独立国アイルランドと、UK連合王国に属する北アイルランドに分かれている。南北が分離したのは19世紀。

アイルランド(Ireland)

首都はダブリン。人口は約460万人。住民はケルト系ブリトン人の末裔以外に、アングロ・サクソン人やヴァイキングの流入があり、イングランドに近い混成。公用語は英語とケルト系ゲール語のひとつであるアイルランド語(Irish)。

アイルランドの語源は古アイルランド語のEriu、さらに遡れば古ケルト語のIveriuだという。意味は “fat、fertile”(土地が肥沃ということか)。

北アイルランド(Northern Ireland)

首都はベルファスト(Belfast)。人口は約180万人。住民はアイルランドと同様の混成。公用語は英語以外にアイルランド語、スコットランド語の方言アルスター・スコットランド語(Ulster Scots)。

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以上の国・地域をすべて包摂するのはブリテン諸島という地理上の概念だ。大小6,000以上の島で成り立つ。