【英語で学ぼう仮想通貨14】ブロックチェーン技術がもたらすネットの安全と自由

2018-05-31お金の話, 仮想通貨

今回はブロックチェーン技術の可能性に関する記事を紹介しよう。


記事は、ビットコイン高騰を受けてバブルはやがて弾けるかもしれないが、ビットコインの基礎になるブロックチェーン技術は思わぬ副産物をもたらすかもしれない、と始まる。以下、ほぼ全文を英日対照形式でお目にかけよう。

出典There could be a silver lining even if the bitcoin bubble does finally burst by John Naughton

インターネットは本来、非中央集権的なもの

(前略)… the real significance of blockchain technology might be its capacity to retool the internet itself to make it secure enough for modern use and return it to its decentralised essence, in the process possibly liberating it from the tech companies that currently have a stranglehold on it.

How come? Well, one can think of the internet as having three distinct layers. At the bottom is the physical layer – the pipes, cables, routers and switches through which our digital bits travel. At the top is the content layer, which is where all the stuff that obsesses us lives – the web pages, status updates, YouTube videos etc.

ブロックチェーン技術の本当の意義はインターネットを一新する能力―、現在の利用状況に見合ったセキュリティを確保し、ネットを本来の非中央集権的なものに戻す能力にあるのではないか。その過程で、一部の巨大ネット企業が完全に牛耳るネットが自由を取り戻す可能性があるからだ。

stranglehold
文字通りには、プロレスのくび輪などの締め技を指す。転じて「きつい締め付け」「完全支配」の意味。

どうやって?インターネットは3つの異なるレイヤーで構成されている。一番基礎の層は、電子信号が移動するパイプ、ケーブル、ルーター、スイッチなどの物理インフラ層である。一番上の層は、ウェブページ、ステータス更新、YouTube動画など、人間が夢中になっている情報を載せるコンテンツ層である。

プロトコル・レイヤーの重要性

In between these two is the protocol layer – consisting of the protocols, ie, the technical conventions that determine how the various devices operating on the network interact. An example is the simple mail transfer protocol (SMTP) that handles email.

二者の中間にあるのがプロトコル層だ。これは、ネット上のデバイスが相互交信するために守るべき技術的な約束事を記述した層である。たとえば、電子メールソフトは、SMTPという通信規約に基づいてメールをやり取りしている。

The strange – miraculous, even – thing about the protocol layer is that it remains largely outside of corporate control. None of the protocols is proprietary; everything in the layer is in the public domain. The people who work on the protocols belong to the internet engineering taskforce (IETF), an open standards organisation run by tech-savvy volunteers (though their work is usually funded by their employers or sponsors).

奇妙かつ奇跡のように聞こえるかもしれないが、このプロトコル層、その大部分はいまも特定の企業が制御できない代物である。プロトコル層に属する規約は誰のものでもなく共有物なのだ。プロトコル層を扱うハイテク精通者たちはIETFというボランティア団体に属していて、給料は雇用主やスポンサーからもらっているのである。

The protocol layer is the key to the internet. It determines not only what it is, but also how it works. It’s what guarantees the network’s intrinsic, decentralised nature.

The layers above and below it – content and physical – are now dominated by giant corporations that, through consolidation, exploitation of network effects and market dominance, have eroded the decentralised nature of the internet. They would dearly love to do the same to the protocol layer.

プロトコル層はインターネットの肝といえる部分だ。プロトコルによってネットの性質が決まり、動き方が決まる。プロトコル如何によってインターネット本来の非中央集権性が保証されているのだ。

しかし現状はどうか。上下のレイヤーは、統合力、ネット活用力、市場支配力などを通じて巨大ネット企業が支配し、インターネットの非中央集権的な本質を歪めている。ネットの巨人たちは当然、プロトコル層も支配したいと思っているはずだ。

プロトコル・レイヤーの直面する問題

For its part, the protocol layer has its problems. One is that it is underresourced: maintenance and development of the protocols for a global network are critical responsibilities, yet are being carried out mostly by volunteers. But a bigger problem is that protocols that were developed for the nascent internet in the period 1973-1983 are not necessarily fit for purpose in the network we now have. In particular, since they evolved at a time when every user of the network was a known and trusted source, they made little or no provision for encryption and authentication, which meant that every communication on the network was about as secure as a holiday postcard.

ただ、そのこととは別に、プロトコル層自体にも問題がある。ひとつは人手不足である。グローバルなネットプロトコルの維持管理はなくてはならない重要な仕事であるにもかかわらず、ボランティアに頼っているのが現状である。しかし、それより大きな問題は、1973年から10年ほどで開発された創世期のインターネットプロトコルは、現状に即しているとはいえない点だ。すべてのユーザーが顔見知りで信頼できる環境で開発されたので、暗号化や認証について無防備なのである。この頃のネット通信は、郵便箱に届いたホリデーカードくらいのセキュリティしかなかった。

Up to now, most of us have resorted to ad hoc tools for overcoming the weaknesses of internet protocols: using WhatsApp or PGP for secure messaging, SSL for e-commerce, TOR for anonymous browsing and so on. The question that computer scientists working on blockchain technology are now beginning to ask is whether their technology might be useful for retrofitting security and authentication to the internet’s protocol layer. If it can, then we will be into an entirely new ball game.

現在でも、秘密通信用のWhatsAppやPGP、eコマース用のSSL、匿名閲覧用のTORなど、プロトコルの脆弱性をカバーする専用ツールを使用している。現在、ブロックチェーン技術の専門家は、この技術を通じてプロトコル層にセキュリティと認証機能を後付けで実装し、インターネットを強化することを目指している。これが実現すれば、従来とはまったく異なる展開が見られるだろう。

It may be, therefore, that the most useful byproduct of bitcoin mania turns out to be a safer, more secure internet. That would not only be a good thing, but also be par for the technological course.

Speculative bubbles are good for innovation, though not in the way investors imagine. The reason we are all able to have smartphones now, for example, is because the ubiquitous connectivity needed to make them work was provided by the folks who lost their shirts building fibre networks during the 1995-2000 internet boom. Every bubble, it seems, has a silver lining.

その場合、ビットコインへの熱狂という瓢箪から、より安心安全なインターネットという駒が生まれることになる。これは福音だともいえるし、技術の世界なら当たり前の話ともいえる。

par for the course
ゴルフでパーはありふれたスコアであることから、「よくあること」「当然のこと」を意味する。ここでは、technologyを形容詞的に足し「技術の世界では珍しくない」と使っている。

投機的バブルは、投資家が想像するのとは違う意味でイノベーションを促す。たとえば、私たちがいまスマートフォンを使えるのはなぜかと言えば、1995~2000年のインターネットブームの最中、ユビキタスな接続を実現すべくファイバー網を構築中に破産した会社が技術を提供したからである。すべてのバブルの彼方には希望の光が差してくるものらしい。

<記事引用終わり>

lose one’s shirt
「無一文になる」「破産する」
silver lining
英米人が好む比喩のひとつ。文字通りには「灰色の雲を縁取る銀色の空」、転じて「暗い現状に差す希望の光」「明るい予兆」を意味する。ここでは、単なるバブルなら崩壊後には何も残らない。しかしブロックチェーンという希望の光が見えると言っている。現在のテクジャイアントによるネット寡占状況から、本来の非中央集権への回帰である。

仮想通貨の貨幣としての命運

先ごろ日本でNEMという仮想通貨が500億円を超えるハッキングに遭い、金融庁の全取引所検査に至るというネガティブニュースが流れた。これでまた一般国民の仮想通貨に対する心証が悪化してしまった。

マネーゴッドの時代、通貨覇権の根幹に切り込んでくる仮想通貨が、このまま無傷で非中央集権の通貨として法貨の地位を得るほど、既得権益層は甘くはないだろう。彼らには政治家や役人を動かせるパワーがある。その気になれば取引禁止さえ可能だ。

しかし、トランプ政権の四苦八苦を見てもわかるように、ナショナリズムは苦しい。これだけネオリベになびいた時代、人々は空気のように自由を追い求めている。

仮想通貨の貨幣としての命運は人々の意思にかかっている。当局が厳しい規制に動いたとして、人々が自由に抵触するそうした措置を素直に受け入れられるかどうか。

日本人はお金に関してもっとも保守的な国民だ。その日本が仮想通貨先進国になっている状況は注目に値する。今回だって日本政府は仮想通貨に好意的だし、先進国中でもっとも進んだ法対応、規制対応を行っていると評価できる。

生き残る道は通信インフラとしての信頼確立か?

この筆者がいうように、仮想通貨は、インターネットの通信規約レベルの基礎技術として発展していく道の方が現実的かつ実現可能性が高いように思う。

テクジャイアントのネットへの君臨は考えものだと常々感じていた。プロトコル層までFANGに仕切られたら、新たな次元の統制社会の到来といえ、ネット本来の自由闊達さが失われてしまう。

通貨の自由より、まず情報の自由が先決なのではないか。