【英語で学ぼう仮想通貨10】仮想通貨と暗号通貨の違いって?

2018-05-24お金の話, 仮想通貨

“cryptocurrency” は暗号技術という新奇性に力点を置いたターム

今日は用語の混在に関して頭を整理しようという企画だ。
日本では「仮想通貨」という用語が一般化している。暗号というと何となく後ろ暗い響きを持つせいか「暗号通貨」の旗色は悪い。英語圏では逆に “cryptocurrency” が市民権を得ている。いったいどちらが正しいのか?両者の意味はどう違うのか?
また類似の概念に “digital currency” もしくは “digital money” ということばがある。暗号通貨や仮想通貨とデジタルマネーは何が違うのか?

仮想通貨も暗号通貨もデジタルマネーに含まれる

ざっくり言うとデジタルマネーの指示範囲がもっとも広い。紙幣やコインなど現物として存在する通貨以外の、デジタル化されたお金はすべてデジタルマネー(digital money/currency)である。
  • デジタルマネーの中で、ブロックチェーンなどの暗号応用技術を用いたものを暗号通貨(cryptocurrency)と呼ぶ。事実上、ビットコイン一派(オルトコインやトークンを含む)を意味している。
  • 一方、仮想通貨はデジタルマネーのうち、暗号通貨を含め、政府以外の民間で発行・管理されているものを指す。したがって、ビットコインも仮想通貨だが、クレジットカードや会員証のポイント(ロイヤルティポイント)やsuica、オンラインゲーム内で使う疑似通貨の類も、それがデジタル化されて何らかの価値を交換するものであればすべて仮想通貨(virtual currency)と呼ばれる。
現代では法定通貨(fiat currency)もデジタルマネーの範疇に入る。紙幣として発行される分は全貨幣流通量(マネーサプライ)の5%にも達せず、95%以上は銀行を通じてオンライン上で発行されるお金だからだ。
下の図を見てほしい。クラス階層でいえば、お金(money)という最上位のクラスの下に、法定通貨とプライベート通貨(private/non-fiat currency)の2つのクラスがある。法定通貨は事実上デジタルマネーだから、デジタルマネーは法定通貨の下位クラスだ。しかし、プライベート通貨でデジタル化されて使われるものもあるので、デジタルマネーはプライベート通貨の下位クラスでもある。いずれにしても、仮想通貨と暗号通貨はさらにその下のクラスに分類される概念なのである。
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アセットとマネーの違い

上の図にはアセット(asset)というクラスが含まれていて、マネーと区別されている。この違いは何かをWikipediaの定義から整理してみよう。

Cryptocurrency
A cryptocurrency (or crypto currency) is a digital asset designed to work as a medium of exchange using cryptography to secure the transactions, to control the creation of additional units, and to verify the transfer of assets. Cryptocurrencies are classified as a subset of digital currencies and are also classified as a subset of alternative currencies and virtual currencies.

Virtual Currency
Virtual currency, also known as virtual money, is a type of unregulated, digital money, which is issued and usually controlled by its developers, and used and accepted among the members of a specific virtual community.

基本文型に落とし込んで比較してみるとわかりやすくなる。
  • A cryptocurrency is a digital asset.
  • Virtual currency is a type of unregulated, digital money.
暗号通貨も仮想通貨もデジタルマネーの一種である。しかし、暗号通貨はデジタルアセット(digital asset)で、仮想通貨はアセットではないのである。このデジタルアセットとは何か?

Digital Asset
A digital asset, in essence, is anything that exists in a binary format and comes with the right to use. Data that do not possess that right are not considered assets. Digital assets include but are not exclusive to: digital documents, audible content, motion picture, and other relevant digital data that are currently in circulation or are, or will be stored on digital appliances such as: personal computers, laptops, portable media players, tablets, storage devices, telecommunication devices, and any and all apparatuses.

デジタルアセットとは持ち主に使用権が存する何らかのものだと言う。デジタルアセットは使用権は認められていても、一般に受け取られるとは限らない。例えば、土地やシルバーはアセットの一種だが、必ずしも相手に受け取ってもらえる(=売れる)とは限らない。しかしマネーは通常であれば受け取りを拒まれることはない。両者は通用力の面でマネー>アセットという序列が成り立つ。マネーの方が広く通用するということだ。なぜならマネーは政府が買い戻しを保証している債権(政府の債務)だからだ。
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金融界でアセットクラスという場合、性質や値動きが似ていて課税的に同じ分類に入る資産を指す。アセットアロケーションといえば、投資するお金をどのアセットとアセットに何割ずつ配分するかを意味する。

 

暗号通貨はあくまでデジタル化されたアセットであって誰の債権でもない。だから、それ自身はマネーではない(マネーには必ず債権-債務の関係が発生する)。
しかし問題が複雑なのは、暗号通貨は支払い手段(medium of exchange)として設計されているから、相手が受け取ってくれさえすれば、アセットの交換(支払い)手段として利用できるのである(tansfer of asset)。
ではアセット以外の、野菜やスナックと交換できるかと言えば、いまはごく限られた範囲で交換できるだけだ。だから機能的にはマネーの(部分的)代替手段になりうるが、法的分類(課税カテゴリー)としてはアセットに分類されるということになる。実際、年内に始まるCME(シカゴ商品取引所)のビットコイン先物取引では、ビットコインは “アセットクラス” と位置づけられている。

ビットコインはアセットのままなのか、それとも将来マネーになるのか?

暗号通貨がアセットの一種であるという発想は通常、日本では出てこないだろう。この定義に従う限り、暗号通貨は土地や宝石やゴールドと同列に並ぶことになる。しかしデジタルマネーの一種でもあるのだから、”可能性としては” 法定通貨に昇格する含みが残されている。
かつてゴールドはアセットではなく法定通貨と同格の位置づけだった(金本位制)が、現在はアセットクラスへ降格されている。暗号通貨とはちょうど逆の立場と言うことになる。ここでさらに問題が複雑なのは、そのアセットとしてのゴールドが歴史上の実績からすれば、ダントツの信用力を誇り、いまでも多くの人が “本物のお金” だと認識している点にある。しかもゴールドの価値は法定通貨によって計算されるから、両者の関係はほとんど絶望的に入り組んでくるのである。
こうなると何が本物のお金かわけがわからないと言うしかないのである。政府を信じるなら法定通貨が唯一のお金だが、換金性と信用を重んじるなら断然ゴールドに軍配が上がる。
そこへ通貨の世界にもデジタル化の波が押し寄せてきている。だから仮想通貨=暗号通貨の最終的な焦点は、それを法律上、法定通貨のひとつに昇格させるのか、それとも、あくまでゴールドと同じアセットクラスに分類しておくのかに行き着くと思う(もちろん安全性の課題もあるが、本質的には法的規制と税金に関わる問題へ集約されるだろう)。これは今後の人間社会の発展を考えるうえでけっして小さな話でないだろう。

クラス階層を意識した概念の整理

以上、ことばの定義の問題が法的扱いの問題へ展開してしまったが、こうした思考の発展を可能にしたのは「クラス階層化による概念の整理」ができたおかげである。実はこのクラス化による理解の整理は、他の場面にも応用がきくので、ぜひ今後の英語学習に役立ててほしいと思う。
一見、重箱の隅をつつく作業のように映るかもしれないが、そうではない。むしろクラスを混同することの弊害の方が大きいのだ。クラスを混同して知識を採り入れると、頭のなかが断片化する。そうすると、せっかく勉強しても頭が整理されず、記憶に残りにくい。
クラス分けは英語の考え方に慣れることにもつながっているので、クラスを考えて概念を理解することは、とても有用な学習アプローチだと思う。
最後に一口話。
crypto-の語源はギリシャ語のkrypto。hidden、secret、concealedの意味である。暗号とは秘密にすること、意味を隠すことだ。
ビットコインはインターネットの地下世界ダークウェブで非合法な取引の決済手段として人気を得た出自をもつからcrypto-の語感はうってつけなのだろう。
しかしビットコインの名誉のために付け加えると、ビットコインは全取引がログに記録されるから、犯罪者が好む匿名性が実はない。これは従来のアナログな無記名のキャッシュにはない暗号通貨の売りである。