【英語で学ぼう仮想通貨08】お金を腐らせるという逆転の発想―Freicoin

前回は自由貨幣(減価通貨)が何を問題視しているのか説明した。簡単にまとめてみよう。

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お金の現状と自由貨幣の狙い

  1. お金は負債として生まれ、債務が市場へ “輸出” される。
  2. もともと市場に流通しているキャッシュは総貨幣量の5%にも満たない。
  3. 市場は負債であふれかえるので返済至上主義となって本来の経済活動にお金が回りにくくなる。
  4. 利子を伴って債権者に返済されたお金は銀行で消滅し、利子分だけが生き残り退蔵される。
  5. こうして持つ者(have’s)と持たざる者(have-not’s)の格差が広がっていく。
  6. この貨幣の偏在が他の社会問題の原因となっている。例えば、日本で給与が上がらず貧困率が上昇している根本原因もこのお金の不公平な仕組みにあるのだが、多くの人々には認識されない。認識させる教育もメディア報道もない。たとえ認識する個人がいても、このお金の仕組みが存続する限りいかんともしがたい。
  7. 以上のような不公正への憤りがビットコイン開発の背景にある。
  8. ビットコインの批判精神をさらに推し進めるため減価費用(demurrge)を組み入れた自由貨幣Freicoinが発行された。これは貨幣の流通速度を速めることで市場を活性化することを目的としている。

Freiconの概要(続き)

Freicoin currency(Freicoin通貨)

Q: Alright! So the creator of this program plays the role of the Main Banker.
A: Freicoin is a distributed network. Since launch, it has been a self-controlled process. The quantity of freicoins produced is determined by the entire network. Nobody can produce “additional” money. Yes, it’s almost like Skynet 🙂
Q: なるほど!このプログラムを作った人はメインバンクの役目なわけね。
A: Freicoinは分散ネットワークです。始動以来、ずっと自己制御で稼働しています。Freicoinの生成量はネットワーク全体の稼働状況で決まります。誰かが勝手にお金を追加することはできません。『ターミネーター』に出てくるSkynetみたいなものです。

Q: Freicoin relies on computers and the Internet, which means it can be turned off, doesn’t it?
A: Yes, this is true. Most of the modern society depends on electronics, though. This means, if the Internet was shut down, it would severely disrupt our whole civilization, not only Freicoin.

Q: Freicoinはコンピューターとインターネットに依存してるってことは停電したらおシャカだよね?

A: その通りです。でも現代社会の大部分はエレクトロニクス依存です。インターネットがダウンしたら被害はFreicoinだけではありません。地球文明全体に壊滅的な被害が及ぶでしょう。

ビットコイン上で運用される自由貨幣

Q: I’ve heard about something like this before. It already exists, and is called Bitcoin.
A: Imagine Bitcoin being a cake. Freicoin adds a small cherry on top of the cake, namely the demurrage fee.

Q: 似たような通貨の話、聞いたことがあるな。すでに稼働しているビットコインとかいう・・・
A: ビットコインはケーキだと思ってください。Freicoinはそのケーキにサクランボを乗せるんです。このサクランボ腐っちゃうんでデマレージ料(減価費用)っていうんですが。

Feicoinはいわゆるトークンだ。ビットコインのブロックチェーンを基盤として、その上で稼働する。

お金の機能で分けて考えると、この発想はわかりやすい。Freicoinは主にお金の交換(支払い)手段の部分を担当するお金だ(medium of exchange)。それに対してビットコインはシステム全体の価値を担保する役目なのである(safe store of value)。

この発想の切り分けは重要なポイントだ。主宰者はこの点をもっと強調すればいいのにと思う。

死蔵すると罰金を取られるお金

Q: How can I get to understand the demurrage fee better?
A: Money degrades over time, and it’s common for traditional “paper money”. They slowly wear out. In that sense, you can think about Freicoin as cash.

Q: デマレージ料って何?よくわからいんだけど・・・
A: Freiconのお金は時間が経つと劣化していきます(劣化率を表すのがデマレージ)。紙のお札が流通を重ねて擦り切れてしまうのと同じです。Freicoinは電子情報ですが、劣化という意味では紙のお札と同じです。

Q: Why does Freicoin use demurrage? I’m worried that my coins will just fade away.
A: Worried? It’s a good thing. If the amount of money was stable, people would prefer saving it as opposed to spending it. This would decrease the quantity of money circulated, which in turn would act against the main purpose of money – a medium of exchange. With demurrage in place, you should think about money as it’s meant to be, not as a storage medium of wealth.

Q: Freiconはどうして劣化していくの?何もしなくても減っていくのって不安なんだけど。
A: 不安ですか?反対ですよ。お金の量が一定だと仮定しましょう。その場合、多くの人はお金を使うより貯めようとします。そうすると社会で流通するお金の量が減ってしまいます。お金の量が減ると、お金はそもそもの目的である交換手段の役割を果たせません。もしデマレージがあれば、人々はお金の役目を考えざるをえません。お金は本来、富を蓄えるためではなく、交換を媒介するためにあるということに気づくはずです。

お金が劣化していくから不安というのは、いまのお金の仕組みに毒された感覚なのである。銀行御コンピューターから負債として生まれてくるお金は、つねに “足りない” ものとして人間の意識に刷り込まれているからだ。人工的に欠乏感、飢餓感が演出されているのである。

だからFreicoin主宰者は「反対ですよ」と言っているのだ。お金の流通速度が増せば、当然、景気は良くなるのである。

デマレージ(demurrage)とは本来、船舶貿易の用語である。港に積み下ろされたコンテナや貨物をフリータイム(無料保管期間)を超えても引き取りに来ない業者に対して、船会社が課す貨物の保管超過料金を指す。延滞料、罰金と同じ発想のものだ。

参考:貿易NAVI「デマレージ

Q: How big is this demurrage fee?
A: Estimated 5% annually. Ultimately it depends on the speed of certain operations in the network.

Q: デマレージ率(減価率)はどのくらいなの?
A: 年率5%くらいです。実際はネットワーク内でのお金の流通速度によって決まります。

Q: With a zero interest rate, investments will be impossible!
A: It’s already possible, for example, in Islam banking. If the investor wants to profit, he must share and risk his investment. And thanks to the Internet, we have a great tool for investing directly – crowdfunding, where every participant can compare his/her own expectations for a new project and decide whether to fund it or not.

Q: 利子がまったく付かないなら投資はできないね。

A: いいえ、できますよ。例えば、イスラム圏の銀行制度はゼロ金利でちゃんと機能しています。投資家が儲けたいのであれば投資のリスクを分担すべきだと考えています。インターネットのおかげで投資機会は増えています。クラウドファンディングがそうです。ひとりひとりが自分自身の期待と評価に基づいてお金を投資するかどうか決める仕組みです。

Freicoin project(Freiconプロジェクト)
Q: Do you want to compete with Bitcoin?
A: No, we want to coexist with Bitcoin.

Q: ビットコインに対抗したいの?
A: いいえ、ビットコインと共存したいです。

Q: Where did you get the money for this project?
A: Freicoin was funded by a public crowdfunding campaign on Indiegogo.

Q: このプロジェクトの原資はどうやって調達したの?
A: Indiegogoのパブリッククラウド・ファンディングで資金を集めました。

Q: Sustainability, justice… You sound like communists!
A: Socialism claims money prohibition. Freicoin aims to fix a broken monetary system. Those are two different things.

Q: 持続可能性、正義・・・まるでコミュニストみたいだね!
A: 社会主義者はお金の廃絶を唱えています。Freicoinは壊れてしまったお金の仕組みを修理したいだけです。完全に立ち位置が違います。

暫定的な中央集権?

Freicoin Foundation(Freicoin財団)
Q: What is the Freicoin Foundation?
A: The Freicoin Foundation is a non-profit organization, aiming to support sustainability and biodiversity by integrating Freicoin into economical relations.

Q: Freicoin財団って何?
A: NPOです。Freicoinを経済取引に組み入れることで持続可能で多様性のある社会を目指しています。

Q: You said that Freicoin is decentralized. But the Foundation makes it centralized!
A: You are right. But we have no other solution. Initial coins should be distributed to the society.

Q: Freicoinは非中央集権だって言ってたけど、財団は再中央集権じゃないの?
A: 仰る通りですが、最初に発行するコインを社会に流通させるには、他に方法がありませんでした。

この再中央集権化は残念なポイントだ。本当に致し方のないことなのだろうか。Freicoinへの信用を高める前に、財団への信用を高めなければならない。自らハードルを上げている。これはプログラミングで自動化すべき部分ではなかったろうか。

Q: Why can’t you just give these coins to miners (as in Bitcoin). Why do we need a bureaucracy?
A: The mining community consists mostly of enthusiasts, not ordinary people who use computers to browse the Internet.

Q: ビットコインみたいに採掘した人にあげればいいんじゃない。なんで管理組織が要るの?
A: 採掘者のコミュニティは採掘エンスーの集まりです。ネットをブラウズに使う普通の人とは違いすぎます。

Q: How many coins does the Foundation have?
A: The Freicoin Foundation distributes 80% of the total Freicoin money supply through grants. The remaining 20% is a reward for miners, who support the network with their computing power.

Q: 財団はどこのくらいのコインを持ってるの?
A: Freicoinマネーサプライの80%を交付金としてネットワークに供給します。残りの20%は、マシンの処理能力を通じてネットワークを支えてくれた採掘者への報酬に充てます。

Q: When, in the future, will all the coins have been distributed?
A: About 3 years after the project launched (December 2012), which means sometimes in 2015 or 2016.

Q: すべてのコインを配布し終わるのはいつ頃?
A: 2012年12月の始動から3年後、2015年末か2016年初になります。

Q: Why do you prefer giving the coins to producers instead of online merchants?
A: Most of the production has already moved from the EU and the US to China. We should support the small amount of producers, who remain in our countries. Online merchants are mostly resellers.

Q: オンラインのショップ経営者じゃなくて採掘者にコインをあげるのはどうして?
A: 採掘の大半はEUからアメリカや中国で行われています。EUにいる少数の採掘者をサポートしたいんです。それにショップ経営者といっていも大半は転売で稼ぐ人たちです。

Q: Why do you want to share the coins between interested customers, and not between everyone?
A: Because if a customer isn’t interested in Freicoin, he won’t use it. So the coins that are granted to him would essentially be lost.

Q: コインを一般人ではなく、限られた数の関係者に普及させるのはどうして?
A: Freicoinに興味がない人にコインをあげても使ってくれません。その人にあげたコインは実質的に捨てたのと同じことになります。

Q: You should fund hi-tech production, not farmers!
A: For the Freicoin Foundation, a sustainable future is the priority. You can live without a TV and a mobile phone, but without food… unlikely! Family farms are not funded by the state, and agriculture is a low-profit activity. They need our help.

Q: 農家じゃなくてハイテク企業に投資したら?
A: 財団は持続可能な社会を第一義に活動しています。テレビやスマホがなくても生きていけますが、食べ物がなければ死ぬしかありません。それに自衛農家には政府の補助金が出ないんです。農業は利ザヤの低い仕事ですから、Freicoinのような手段で助ける必要があります。

以上でFreicoinのQ&A紹介は終わる。

Freicoinの評価

トコシエはこのFreicoinの発想は評価する。ただ最初にこのFAQを読んだとき、地域通貨(local money、regional currency)のことを思い起こした。2000年前後だったか、NHKで「エンデの遺言」という “お金の根源” を考える番組が放送された(いまでもYouTubeで視聴できると思うので興味のある人にはご視聴いただきたい)。この番組はなかなか優秀な番組で多くの反響を巻き起こした。日本でも地域通貨ブームが起きたくらいだ。

ただトコシエには、みながメッセージを読み違えていると思われた。リベラリズムや社会民主主義に惹かれていく人たちの共通点なのか、自分たちの周囲の狭い共同体へ問題を囲いこんでしまうので広がりを持たないのである。

エンデはもっと広大な射程でものを見ていたと思う。お金の仕組みのおかしさが、人の大事な時間を奪っているということの意味を考えてくれということではなかったか。それはいまも続いている事態だ。彼の『モモ』という童話には時間泥棒という不気味なキャラが出てくる。利子を伴って人生の時間を奪っていくお金の仕組みの象徴としか思えない。

Eテレの番組の中で確かに地域通貨の試みは紹介されていた。でも地域共同体を取り戻すだけではダメなのだ。それは地域通貨参加者の善意とか信頼という綺麗ごとの世界で自足してしまう。そして尻すぼみになる。外の世界の巨大な力に押しつぶされるからだ。

上のFAQの回答にあるように、Freicoin主宰者は減価通貨を使いながら「持続可能社会」と言ってしまう。ハイテク企業ではなく弱者である農家を助けたいという。これは地域通貨のとき見た風景と同じだ。狭い世界に埋没してしまう流れである。

せっかく仮想通貨という地球大への拡張性をもつツールを使いながら、そちらを志向してしまうのはいかにももったいないと思う。

自由貨幣の肝は価値交換機能と価値保存機能の分離

トコシエが見るに、自由貨幣の最も重要なポイントは、ひとつのお金に同居している交換手段の機能と価値の保存機能を分離した点にある。

多くお金を持つ者がせっせと蓄財には励むのは、“お金を使わない権利” を増やしているわけだ。エンデが時間泥棒を通じて静かに批判したように、彼ら富裕層はそうして無意識のうちに、持たざる者の人生の時間を奪っているのである。それでは真面目に働く普通の人々が報われない。現代の最大の矛盾のひとつではないだろうか。

お金持ちの言い分は見えている。自分の代で使い切らなくてもいんだ。かわいい子孫(あるいは事業)が使えるようにお金を残して死にたいんだ、と。

その前提にあるのはお金が腐らず永久に貯めておけるという安心感である。政府がそれを保証しているから安心しているのである。

このようなお金への基本感情はお金の主体が金属や紙からコンピューター上の電子数字に転換した今でも変わらない。そこではお金の交換媒体としての役割は忘れられているのだ。しかしその機能が不全を起こせば、日本のようにデフレに苦しむのである。

人類はマモンを追い払えるだろうか?

現在のお金の仕組みの欠陥は明らかだ。それはお金を使わない方が有利なように設計され運用されて、とうとう今日の気の遠くなるような所得格差を生み出したのである。

この貨幣システムにはマモン(mammon)が住んでいるとしか思えない。少しでもお金を持つと、みなそこへ吸い込まれるように口を閉ざしてしまう。マモンはお金持ちの貪欲のたとえというより、人間の欲望が凝り固まって動けなくなったシステムの醜悪さのたとえのように思われる。ゲゼルが批判したのはこのような貨幣システムの “反社会性” なのである。

地域通貨萌えの人たちは現在、仮想通貨コミュニティへ流れ込んでいるように見える。彼らはそこでも、ふたたび無政府思想や共同体思想の夢を語っている。いかにも進歩がない。問題にすべきは、上記のような不具合が埋め込まれた、お金のシステムの “反社会性” である。

そのためには、例えば、Freicoinやビットコインを政府の保証付きの通貨に進化させればいいだけではないか。ドル円と併存させればいいのである。

どうして誰もそれを言い出さないのか不思議でならない。