【英語で学ぼう仮想通貨03】ビットコインには哲学がある

2018-05-24お金の話, 仮想通貨

今回でビットコインの話は最後になる。最後は少し思想的な問題に踏み込んでみたい。単なる投機対象でないことがおわかりいただけると思う。

出典 Bitcoin: What The Heck Is It, And How Does It Work?


How do you store and spend your bitcoins? Is there any actual physical money?

ビットコインは保管できるの?どこで使えるの?物理的なビットコインって存在するの?

Even though there are a handful of bitcoin ATMs in the world, bitcoin is not a physical currency. Spending takes place from one user’s virtual wallet to another user’s virtual wallet, via an exchange of public and private security keys.

世界各地にビットコインATMというのが設置されているが、ビットコインは物理的なお金ではない。ビットコインで支払うということは、あるユーザーの(コンピュータ上にある)バーチャルな財布から別のユーザーの財布に残高数字が移動させることを意味する。移動のためにはパブリックキーとプライベートキーという暗号鍵を交換しなければならない。

Physical bitcoins — which can look like coins or bills, or can be any other item — are storage devices for private keys. In one way, storing private keys in physical media is extremely secure; hackers can’t access the box under your bed via a virtual back door. On the other hand, storing private keys in physical media is as insecure as keeping cash on hand; thieves can access the box under your bed via a literal back door. Or you could end up losing the external hard drive with your $5 million on it.

ビットコインを物理的に持ち歩くということは、プライベートキーの保管装置(それはコインでもお札でも他のどんな形状でも構わない)を持ち歩くという意味になる。ベッドの下に置かれた物理的な箱がビットコインの保管装置だとすれば、ハッカーがどんなにバーチャルな裏口を駆使しても、その箱にアクセスするのは無理だ。ただ物理的な箱にプライベートキーを入れておくのは手にキャッシュと持っているのと同じくらい不用心だ。泥棒は実世界の裏口からいくらでもあなたの寝室へ侵入できる。外付けのハードディスク装置に500万ドル相当のプライベートキーを保管していたとして、それが盗まれただけですべておじゃんだ。

So is all this “alternative money” legal? Do the feds care?

この代替通貨って合法なの?FEDの対応は?

Yes, and sort of. It’s not illegal, at any rate. The Senate Banking Committee and Senate Homeland Security Committee held hearings on Bitcoin back in November. The outcomes were largely positive for Bitcoin, with the Obama administration and Senate willing to leave Bitcoin alone for the moment.

「合法だ。FEDはそれなり対応している。いずれにしても非合法でないことは請け合う。」
“the feds” はアメリカの中央銀行に当たる連邦準備銀行(FRB: Federal Reserve Bank)の12ある支部(Federal Reserve District)をまとめた総称だ。だから “the” が付いて複数形になっている。通常 “fed” という単語は連銀を意味する。
「(2013年の)11月に上院の銀行委員会と国土安全保障政府問題委員会でビットコインに関する公聴会が開かれた。その結果、ビットコインは法的に “白” ということになって、オバマ政権も上院も当面はお咎めなしという方針になった。」

However, the complete collapse of Mt. Gox has returned federal attention to the world of cryptocurrency. Senator Joe Manchin (D-WV) has called for a ban on bitcoins, and the Senate Banking Committee brought in Federal Reserve chair Janet Yellen to testify about the potential for regulating Bitcoin. The thing is, there is no such potential, Yellen said, at least not now. She testified that Bitcoin is “a payment innovation that’s taking place outside the banking industry,” and added:

その後、日本でMt.Goxの詐欺事件が起きて取引所が閉鎖に追い込まれる事件が起きると連邦政府も仮想通貨にふたたび関心を持ち始めた。Joe Manchin上院議員(ウェストバージニア州、民主党)がビットコインの規制を求めたので、上院銀行委員会は 連邦準備制度理事会のJanet Yellen議長にビットコイン規制に関する証言を求めることになった。Yellen議長は、少なくとも現時点で規制の可能性はないと証言し、『金融業界の外部で起きた支払いに関するイノベーションである』と説明した。そして議長は次のように付け加えた。議長によれば「ビットコインは非中央集権の、国境を超えた存在」なのである。

To the best of my knowledge there’s no intersection at all, in any way, between Bitcoin and banks that the Federal Reserve has the ability to supervise and regulate. So the Fed doesn’t have authority to supervise or regulate Bitcoin in any way.”
Yellen also added, “It’s not so easy to regulate Bitcoin because there’s no central issuer or network operator,” calling Bitcoin a decentralized, global entity.

私の知る限りビットコインとFRB所管の銀行の間にはどのような接点も存在しません。従いまして連邦準備銀行にはビットコインを監督し規制する権限は何もないことになります。
ビットコインには中央の発行者もネットワークの総括管理者もおりませんので規制しようにも簡単にはいきません。

ビットコインの基本理念:非中央集権とトラストレス

To Bitcoin developers and users, that global reach and lack of central authority is a core feature, not a bug.

ビットコインの開発者や利用者にとって、非中央集権による世界的な普及というのはビットコインの中核機能であって、断じてバグなどでない。

ビットコインの思想的核:非中央集権による政府や金融機関からの独立と貧しい国々での普及

“…global reach and lack of central authority is a core feature.”

ここは重要なポイントだ。

  1. まずビットコインを最初に喜んで使ったのは、海外送金(国元への仕送り)を頻繁に行う出稼ぎ労働者たちとその家族だった。手数料がべらぼうに安く、決済スピードも既存の送金サービスとは比べようもなく速かったため、人気に火が付いたのである。ビットコインは先進国での投機の対象ではなく、そもそもは貧しい人たちに開かれたお金だったのである。
  2. さらに、独立性の問題がある。FRBの証言にもあるように法律に触れない範囲というのが前提としてある。その範囲で中央集権的権力を排除するのが開発者たちの意図だからだ。ここが崩れ去ればビットコインはビットコインでなくなる。

英語的には “decentralized” という概念が胆だ。中央当局の監視がない状態、決済を仲介する第三者機関(銀行など)を排除した状態の合わせ技が “decentralized” なのだ(名詞形の “decentralization” もよく使われる。通常、”非” 中央集権と訳されているが気持ち的には “脱” 中央集権なのだと思う)。今後、世界経済において重要なキーワードになる予感がする。

ビットコインは既存の組み合わせで生まれた

裏話みたいになるが、ビットコインというのは既存技術の組み合わせで出来ている。トコシエが技術翻訳をバリバリやっていた1990年代、時代はUNIXコンピュータと分散処理によるネットワーキングが主流化していた。ビットコインの依拠している分散処理という発想自体は長い利用実績のある分野なのだ。ただお金の絡む話だ。銀行は中央に集約して管理する手法以外受け付けなかった。あちこちにデータを分散させるとエラーや障害の確率が高まり、リスクが大きすぎるからだ。

金融の決済処理において信頼性と安全性は速度よりも大事な問題だ。ビットコインは最新の処理形式だった分散台帳管理技術(DLT: Distributed Ledger Technology)をベースにしている。さらに処理の機密性と安全性を高めるべく暗号鍵技術を応用した。それらのコンビネーションがブロックチェーンというブレークスルー技術に結実したわけだ。

またビザンチン将軍問題(Byzantine Generals Problem)を解消する合意形成アルゴリズムを開発できたことが決め手となったと言われている。この辺に興味のある人は以下のサイトを参考にするといい。

参考記事「ブロックチェーンの正体」
「ビザンチン将軍問題とブロックチェーンの関係性」

仮想通貨は古くて新しい問題を考えるきっかけになる

ビットコインはいわば “貧者” のための金融決済システムだ。日本は先進国なのでビットコインの革命的なインパクトは実感できない。だから専ら投機的な関心を集めている。

しかし非先進国では海外との送受金というのは、外国への出稼ぎが当たり前な彼らにとって死活的に重要な問題なのだ。仮想通貨が現れるまでは、専門の為替・送受金サービス業者が街中に乱立し低料金を競い合っていた。でもビットコインの簡便さ(低料金、高速性)とは比較にならないのである。

中央の規制からフリーな経済圏の構築こそビットコインの背景にあるリバタリアン的な哲学(libertarianism、libertarian mindset)だ。これに関連してトラストレス(trustless)という概念も重要だ。さきほども言ったように、銀行は自前で管理したがる傾向が強い。それは安全性や信頼性の確保といえば聞こえはいいが、背後には巨大な利権が潜んでいる。金融業というのは許認可事業だ。既得権益と結びついているのだ。

ビットコインがいう “trust” とは政府の認可のことだ。伝統的な “trusted third party” (認可を受けた金融業者)が介在しなくても、決済の妥当性を保証できるというのが “trustless” の意味なのである。

ではなぜアメリカや日本でもこんなに注目を集めているのか?それは社会でお金をどうするかという古くて新しい問題に関わっているからだ。

先進国の国民も十分、金融業者の既得権益に護られた腐敗にはうんざりしている。とりわけ2008年のリーマンショックの成り行きを見て理不尽な思いをした人は少なくなかったはずだ(福島原発のときも同様のことは目撃されたが・・・)。救われたのは個々の債務者ではなく、不良債権で潰れかかった(いわば自業自得の)巨大金融機関だけだったのだから。

お金は本当はどこにあるのか?

理不尽と言えば、日本は世界最大の債権国のはずだ。なのに財務省は「借金が1100兆円もあって大変だから増税しなければいけない」という。お金が足らないなら海外資産でも “くずして” 国内に回せばいいのにそうしない。なぜだろう?日本人に所有権があっても自由に使えないならそれは日本人のお金じゃないのでは?

当たらずといえども遠からずなのだ。みなさんの感覚が正しい。お金のシステムは明らかにどこかがおかしいのである。その辺については次回以降少し踏み込んでみたい。

同じように憤懣やるかたない人間はアメリカにも大勢いた。コンピュータオタクやプログラマーの中にもいたのだ。

特にかの国はそういう人間が立ち上がってアップルをつくりグーグルをつくった国だ。彼らはリーマンショック以後しびれをきらして立ち上がった。そして彼らの持ち前の集中力を武器に、”速攻” で作りあげたのがビットコイン決済システムなのである。

そういう意味では、ビットコインがけっして不純な動機に基づく、いかがわしい代物ではないことがわかるだろう。それを今後どうしていくか―大人のおもちゃで終わらせるのか、未来のお金として改良していくのか―は、人類の選択にかかっている。